前の章へ


第三十五分室へようこそ!どうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。



安康天皇(穴穂御子)

1、押木の玉縵(たまかずら)

穴穂御子は石上穴穂宮(奈良県山辺郡)において天下を治められました。

ある日、天皇は末の弟である大長谷王子(おおはっせのみこ)のために
坂本臣の祖、根臣(ねのおみ)を大日下王(おおくさかおう)の元へ使者として送り
「汝の妹君、若日下王を大長谷王子の嫁に欲しい」と告げられました。

大日下王は大変喜び何度も頭を下げて
「これ以上の婚姻はありますまい。どこへも出さず、王子のお越しをお待ちしております」
と言いました。
しかしながら、言葉だけでお受けするのは失礼かと思い
約束の印に敬意を表す贈り物として[押木の玉縵]を根臣に持たせて帰しました。

ところが、あろう事か根臣は
この玉縵の余りの美しさに心を奪われ、これを着服してしまうのです。
そして天皇には
「大日下王は天皇のお言葉に従わず、『何故私の妹が犠牲にならねば、ならんのだ!』と仰って刀を振り回してお怒りです」
とまるっきり嘘の報告をしてしまいました。

天皇は大激怒!
大日下王を打ち滅ぼし、彼の妻であった長田大郎女を取り上げ
自分の皇后としたのでした。


※大長谷王子は粗野粗暴で有名で嫁の来てがなかったのです・・・(^^;
※押木=彫金用の台
※玉縵=沢山の玉に穴を開けて紐状のもので一連に繋げた装身具



なんか・・・・
さらりと終わってはいますが、根臣がどうなったか、とか
なして嫁を取り上げたかとかが意味不明ですな(^^;
しかも取り上げた嫁が皇后・・・正妻に納まっているあたりなんか陰謀臭いでしょ〜

それもそのはず・・
この章は次の章につながる大長谷王子の陰謀のまずはエピローグといった感じなのですよ・・

2、目弱王(まよわおう)の乱

ある時、天皇と皇后が閨での睦ごと。
「お前は何か不満や不足に思うことはないかい?」
「まあ、何を仰います。陛下の厚い温情を頂いて何不自由なく生活しております。
何を不満に思うことがあるでしょうか?」
「でもなあ・・・お前の連れ子の王子が成人して、実の父を殺したのが私だと知ると、
怒り、復讐しようと思うのではないかなあ・・・。」

連れ子の王子とは目弱王と言って、今年7歳になる男児。
なんという偶然か、彼はちょうど外で遊んでいるときに
天皇と皇后の話を聞いてしまうのです。
そして、むらむらと沸き上がる復讐心!
彼は天皇の寝静まるのを待って、寝所に押し入り、
傍らの太刀でばっさり!天皇の首を落とし、
そのまま、葛城大臣円(かつらぎのおおおみつぶら)の屋敷に逃げ込んでしまいました。


この時天皇御歳五十六歳。 御陵は菅原の伏見の岡(奈良県生駒郡)にあります。


は?偶然聞いた?
んなことあるかー!!ヾ(*`Д´*)ノ"彡☆
しかも7歳。数えでいっても8歳か9歳だぞ!
寝ているとはいえ、成人の首を刀でばっさり!とか・・・
ありえねぇ〜〜(´Д`;)



さてさてさて、
この急報を舎人より知らせ聞いた末っ子の大長谷王子。この時まだ少年でありました。
大変嘆き憂い憤り、慌てて兄の黒日子王のもとへ向かいます。
しかし、兄は全然驚かず、子供の言う事だと、笑って全く信用しません。
これに大長谷は
「実の兄が!しかも天皇が殺されたのに!!お前はおろかだ!!」
と襟首を掴み引き倒し、ばっさりと一太刀で殺してしまいます。

次に向かったのは同じく兄の白日子王のもと。
ここでも信用されず、
なんと、こんどはこの兄を引きずりだし、穴に生き埋めに!
白日子は腰まで埋まった所で両目を飛び出させ死亡してしまいます。

二人の兄を殺した大長谷は
戦支度を整え、軍勢を率い、葛城の円の屋敷を取り囲みますが、
円は大長谷の軍に、大量の矢を葦の花が飛び散る如く浴びせかけ応戦します。

矛でそれを払いながら大長谷は大声で叫びます。
「私と契りあった女はここにおるのか!」
それを聞いた葛城大臣円は武装を解き屋敷の外へ出てくると
臣下の礼を取り何度も頭を下げつつ答えます。
「先日、王子が求婚なされた私の娘、訶良比売(からひめ)は、私の私有地である屯倉を5つ付けてお渡ししましょう」
「よし、分かった。このまま目弱王もさしだし、降伏せよ」
「多分、このまま私が力を尽くして戦っても、勝てるみこみはないでしょう。しかし、皇族であるにも関わらず、臣下である私を頼ってこられた目弱王さまは、死んでもお渡しすることは出来ません」
そういうと、円はまた屋敷に引き返していきました。

戦いは長くは続きませんでした。
とうとう兵力も矢も尽きたとき、円は王子に尋ねます。
「王子、とうとう矢もつきました。私ももう駄目でしょう。王子はこれから、どうなさいますか。」
「円よ、もうよい。私を殺して大長谷に差し出し、許しを請うが良い。」
これを聞き円は王子をその太刀で刺し殺し、
自らも頸を切り、自害しました。



ちょっ、ちょっとー! 兄2人が天皇謀殺を知らないのに末っ子で子供の大長谷だけが知ってるっておかしいでしょw
これだけで誰が目弱王を手引きしたのかが丸分かり(^^;
そして目弱王の後ろ盾は目障りな大豪族「葛城」。
ここで彼は葛城の力をそぎたかったんでしょうねぇ。
しかし、この重要な場面で女優先(笑)
なんという女好きだ!
後に出てくる彼の章でも女性に関する記載が多いからなあ(^^;



3、市辺の忍歯王(いちのべのおしはおう)の難

ある時、淡海(おうみ)の佐佐紀の山君の祖先である韓袋(からぶくろ)という者が言うには
「淡海の久多綿の蚊屋野というところに、素晴らしくでかい鹿がおります。
その脚の長さといったら、まるでススキの様に長く、角といったら枯れ木の如く大きいのです。」

大長谷王子は是非見てみたいものだと思い、
市辺の忍歯王を誘い、淡海に出かけて参りました。

蚊屋野に着くと、各々で仮宮を作り
一泊して明日朝早く出かけることにしました。
あくる朝、忍歯王は日が昇るよりも早く目覚め、身支度を整え出発しました。
途中、大長谷王子の仮宮を通りがかり、
「なんだ、まだ寝ているのか。もう夜は明けたというのに。私は先に狩場に向かうよ」
と気軽に声をかけると、さっさと馬を進めていってしまいました。

大長谷の侍従たちはこのことを
「なんという大変な事をいう王子だ。きっと先に行ってよからぬ事をたくらんでいるにちがいありませんぞ」
と王子に伝え、しかも
「王子、ご用心なさいませ。しかり武装して参られませ」
と、衣の下に鎧を付け、弓矢を持たせて送り出しました。

大長谷はすぐに忍歯王に追いつくと、後ろから有無を言わさず射落とし
その体をバラバラに切り刻むと、馬の飼い葉おけに入れ、埋めてしまいました。

この事件はすぐに忍歯王の二人の王子に伝わりました。
常々、大長谷のやり方に危険を感じていた二人は
取るものもとりあえず、身一つで逃走します。
途中、山代の苅羽井で一休みして、食事をしていると
目の周りに刺青をした老人が現れて、食べているものを欲しがります。
「こんなものでよかったらあげるよ。でも、あなたは誰?」
「私はこのあたりで豚を飼っている民のものだよ」

二王子はこの後、老人と別れ、玖須婆の河を渡り、針間国まで逃げ至りました。
そこで志自牟という者の家に
身分を隠し、牛馬の世話をする下男として仕えることになりました。



唐突に出てくる、目の周りに刺青をした老人・・・
出てきて食い物奪って、名乗るだけで何をするでもなく・・・
なんという怪しさ!(笑)
いや・・別に・・宇宙人とかそんな・・言ってないし・・(笑)
ただ、特別に記載はないけれども、
二人の王子の逃走を助けてくれたんだろうなあ・・とは想像できる。
もしかして二人の王子に速攻で事件が伝わったのも
この怪しい老人の一派(?)のおかげかも〜〜、とかね。




天皇を殺させ、兄二人も殺し、そしてライバルになる従兄の王子も殺し。
少年の頃からの大人顔負けの智謀と猛々しい性格。
邪魔者を次々と排除して、名実共に次期天皇を手にした大長谷王子。

彼こそが後の武王、雄略天皇なのですよ。

次の章へ



inserted by FC2 system