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第十七分室へようこそ!どうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。

さて、神倭伊波禮毘古命が熊野村に到着した時、大熊*1 が突然出てきた。
するとたちまち神倭伊波禮毘古命をはじめ彼の軍までも力を失って、倒れ伏してしまった。
そこへ熊野の高倉下=たかくらじ が一振りの太刀を持って現れた。
御子がその太刀を手に取ると嘘のようにからだの痺れがとれ、体に力が湧いてきた。
神倭伊波禮毘古はその太刀をもって、熊野の山の荒ぶる神々を切り倒すと、 彼の軍もすべてもとにもどった。

「助かったぞ。高倉下。しかし何故この太刀をお前が持っていたのだ?」
「御子さま、この太刀は天照大神と高木神に授かったものでございます。」
そこで、高倉下はこの太刀を授かるに至った経緯を説明した。

「私は昨晩、高天原の夢を見ました。
夢の中では、天照大神様と高木神様が建御雷神=たけみかづちのかみ 様を及びになって葦原中津国で御子が苦しんでいるので助けに行って欲しいと頼んでおられました。
すると建御雷神は私が行くまでもない、この太刀を降ろしましょう。 この太刀は私と一緒に葦原中津国を平らげた太刀で名を 佐士布都神=さじふつのかみ(またの名を甕布都神=みかふつのかみ、またの名を布都御魂=ふつみたま)*2 といいます。
  とおっしゃって、地上に落とされると、それが私の蔵の屋根を破ったのです。
今朝私が蔵を見に行きますと確かに夢の通りに太刀がございましたので、御子に献上しに参ったという次第でございます。」
「また、高木神は夢の中でこうもおっしゃいました。 これより先は荒ぶる神が大変多い。御子の為に八咫烏*3 を遣わそう。この烏が御子を安全な道に先導してくれるであろう。」

*1、神の化身の熊
*2、天理市の石上神社(いそのかみじんじゃ)に祭ってある。
*3、咫はてのひらを広げたときの親指から中指までの長さ、 伝承によるとこの烏には足が三本あったそうです。

熊野は今現在でもうっそうとした森の国です。
そこでイワレヒコは拒否されてしまいます。これまでの順調な旅がナガスネヒコとの敗戦から嘘のように困難な道のりになってしまうのです。そこでまた天からの助けがやって来ましたよぉ〜!!
ここで?となるのがサジフツノカミと呼ばれる太刀です。
これは今は石上神社にある事になっているのですが、石上といえば物部の・・・物部の祖先はこのページの最期の方に出てきますが、ニギハヤヒなのです。
ニギハヤヒはナガスネヒコ側にいるはず・・・
あやしいでしょう・・( ̄ー ̄)v
ふっふっふ・・まあ続きをどうぞ☆
そうそう!文中にでてくる「御子」はすべてイワレヒコの事を指しています。 神の子であることを強調したかったんでしょう。

八咫烏の先導の元、吉野河に立ち寄った際に魚を捕っているものにであった。名を
国つ神、贄持の子=にえもちのこ。

次に光る井戸より出てきた、尾のある者に出会った。名を
国つ神。井氷鹿=いひか。

次に巌を押しのけて出てきた、尾の有る者に出会った。名を
国つ神。石押分の子=いわおしわくのこ。
彼は天つ神さまがおいでになると聞いて迎えにきた。といった。

そこから荒い山中を越えてようやく宇陀の地に到着した。
この地は兄宇迦斯=えうかし、弟宇迦斯=おとうかし の兄弟で収めている土地であった。
そこで御子は八咫烏を先に使いに出して兄弟に自分に仕えるかどうか打診した。
弟は神の御子に仕えましょう。といったのに対し兄の方は断固として戦う!といって兵を集めはじめた。
しかし、なかなか思ったように集まらなかったので、押機(おし)*1 を仕掛けることにした。
まずは従う振りをして、押機をしかけた大殿で御子を待つ事にした。

だが弟宇迦斯は御子の元に走り、兄の計画を打ち明けたので、道臣命=みちおみのみこと*2 と 大久米命=おおくめのみこと*3 は兄宇迦斯を呼び出しこう言い放った。
「お前が作ったその大殿はお前自身がまず中に入ってみよ!」
道臣命と大久米命はいやがる兄宇迦斯を大殿に太刀で追い込み、兄宇迦斯は自分のしかけた押機で圧死してしまった。
道臣命と大久米命はその死体を引きずり出し、切り刻んだので、その地を「宇陀の血原」と言う。

その後弟宇迦斯は御子の軍勢を御馳走でもてなした。

この時に歌われた歌
宇陀の 高城に 鴫罠張る 我が待つや 鴫は障らず いすくはしくぢら障る 前妻が 肴乞わさば 立柧梭の 身を無けくを こきしひゑね 後妻が 肴乞わさば いちさかき身の多けくを こきだひゑね ええ しやごしや こはいのごふぞ。 ああ しやごしや こは嘲笑ふぞ。
【宇陀の高い城壁に鴫を捕ろうとして、罠を仕掛けたけど鴫はかからなかったよ。 前の妻が食べ物を欲しいといったけど、そばの木のようになにも無かった。後妻が食べ物を欲しいといったら、実がたくさん成っていた。なんて面白いんだろう。さあ笑え笑え。】

*1、有る場所を踏むと落ちてきた物などによって、圧死する仕掛け。
*2、大伴連(おおとものむらじ)の祖
*3、久米直(くめのあたい)の祖

さて、意味不明の国つ神がぞろぞろとでてきましたねぇ〜。
尾のあるとはいったいどういう事でしょうか?光る井戸とは?石を押しのけて出てきたとは?
尾のあるように見えたという事で、毛皮をまとった原住民族との見方もありますが、 そうすると光る井戸にどう説明をつけるのでしょう?火などの明かりをイワレヒコが知らないはずは ないし、文字どうり光るとしか表現できないような現象だったとしたら・・・
この頃に熊野に栄えていた文明を侮れないことになりますよね。また磐を押しのけて出てきた という事は、石(レンガ?)なども使って住居を築いていたのでは?と思いたくなりますよね。
実際ニギハヤヒは天の「磐」船でやってきてますし・・・。石がよく見られる文化といえば東北・・・
おっと!そう言えばエウカシ、オトウカシ兄弟のことですが、これは弟がなかなかの策士。 ドサクサで財産一人占めですからね(^_^;) この後に載っている歌はその様子を当てこすって作られたような感じを受けませんか?!

宇陀を出立すると次に忍坂の大室(おさかのおおむろ)に到着した。
そこでは尾のある土雲(つちぐも)*1 八十建=やそたける が待っていた。
御子はここで八十建に宛てて、御馳走を送り、料理人を送りこんだ。
その料理人には
「歌が聞こえたら、その歌を合図に八十建を斬れ!」とあらかじめ命じてあった。
そして八十建の油断を見澄ますと歌と共に攻め入り、一族もろとも滅ぼしてしまった。

その時の歌は
忍坂の 大室屋に 人多に 来入り居り 人多に 入り居りとも みつみつし 久米の子等が 頭椎 石椎もち 撃ちたし止まむ みつみつし 久米の子等が 頭椎 石椎もち 今撃たばよらし
【忍坂の大室屋にどんなにたくさんの兵士がいても雄雄しい久米の者たちよ、頭のような武器を持ち石の武器をもち戦うのだ。今こそその投機!】

*1、土着の原住民・・の意味だとおもう・・・

ぐわあ〜〜〜!!むっちゃ!卑怯(ノ_−;)・・・(汗)
でも日本の英雄と呼ばれる男達は結構卑怯な手を使っています・・・ヤマトタケル然り・・・義経然り・・・楠公然り・・・
これを作戦と呼ぶか、奇襲と呼ぶか・・・難しい所ですな(ーー;)

さてこの後、いよいよ登美毘古を攻める時がきた。
この時に歌われた歌は

みつみつし 久米の子等が 粟生には 韮一茎 そねが茎 そねが芽 繋ぎて 撃ちてしやまむ
【久米のもの達よ(兵隊)粟の畑にはくさい韮が一茎混じっているぞ。その茎と芽とを繋いだときこそ、戦いの始まりだ】
 
みつみつし 久米の子等が 垣下に 植えし椒(はじかみ) 口ひひく 吾は忘れじ 撃ちてしやまむ
【久米のもの達よ われらが植えた生姜は 口がひりひりとして、忘れられないであろう。その時こそ戦いの始まりだ】

神風の 伊勢の海の 大石に 這い回る 細螺(しただみ)の い這い回り 撃ちてしやまむ
【伊勢の海の大石に這い回るキサゴ貝のように戦いをするのだ】

彼等は兄師木=えしき、弟師木=おとしき との戦いで兵達は大変な痛手を受けた。
ここで歌われた歌は

楯並めて 伊那佐の山の 樹の間よも いきまもらひ 戦えば 吾はや飢ぬ 島の鳥 鵜飼が伴 今助けに来ね
【われわれは今山で戦っているのだが、もう疲れて飢えてしまった。鵜飼をしているとも*1 よ。どうか助けに来てくれ】

この時、邇藝速日命=にぎはやひのみこと が御子の元にやってきて、
「私は天つ神の御子にお会いしたくて参りました。」といってやってきた。
彼は御子に天津瑞(あまつしるし)*2 を差し出して忠誠を誓った。

邇藝速日命が登美毘古(ながすねひこ)の妹、登美夜比売=とみやひめ を娶って誕生した子は
宇摩志麻遲命=うましまぢのみこと
この子は物部連・穂積臣の祖先となる。

その後御子は彼に従わないもの達を悉く退ける事に成功し、畝火の白橿原宮(うねびのかしはらのみや)*3においてこの国を治めた。

*1、前出の国つ神、贄持(にえもち)の子のこと
*2、天つ神の証拠、三種の神器のようなもの。書紀には天羽羽矢・歩靫とかかれている。
*3、奈良の橿原神宮

いよいよ復讐戦です。
今度は前のようにいきなり正面から攻めずに色々と策を弄したにのがいくつも上げた歌にこめられていると思います。直接こんな「卑怯な」ことをして勝ったんだよ!!っていっちゃうとやっぱりねぇ〜〜・・。 という事だったんでしょうかね(^_^;)
私なりに解釈してみましたが、粟畑の臭い韮とは鉄壁に見える敵の団結も一本だけ韮が混じっている。 そこから突き崩そう。そして、生姜を植えるとは敵方に偽情報などを流して、皆が疑心暗鬼になる元を 作っておけ、それはチョット齧っても忘れる事の無い痛みになる。そこでキサゴ貝(1〜2pの海岸でよくみかける渦巻き貝)が岩を這うようにじわりジワリと攻めていこう・・。ナ〜ンテ意味かな!?と! こんなとこでしょうか^^?
それでもやっぱりナガスネヒコは強かった!!途中で援軍を頼まなければいけないぐらいイワレヒコは追い詰められていますね。
しかし、結局は「韮」であるニギハヤヒがナガスネヒコを裏切って投降し、結果はごらんの通りです。

ナガスネヒコは破れた後東北に逃げたという話もあります。おお!(あ・・わざとっぽい?)そう言えばさっき石の文化は東北という話をしましたよね・・( ̄ー ̄)v

ところでニギハヤヒですが・・裏切り者の名をうけて〜♪の割にはナガスネヒコ(トミヒコ)の妹と 結婚しちゃったりしてるんですよねぇ〜・・
これはいったいどうした事でしょう。
ニギハヤヒの投降劇にはなにか裏の秘密が隠されているのでしょうか・・・?

ちょっと今回は一気にダーッといってしまったので長くなってしまいました。ごめんなさい。


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