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第八分室へようこそ!早速続きを始めたいと思います。

根の国訪問
大国主が復活した事をしった兄神達は
次には大木を組み、氷目矢(ひめや)*1 で固定すると、その中に大国主を呼びこんだ。
そして大国主が中に入った時に氷目矢を抜き、かれを圧死させた。

母神はまたもや大国主を復活させると、
「このまま、お前がここにいると、いつかは必ず兄達によって滅ぼされてしまうでしょう。」
と言って、木国(きのくに)*2 の大屋毘古神=おおやひこのかみ*3 のもとへ匿った。
しかし、すぐに居場所を嗅ぎ付けた兄神達は大屋毘古神に矢を向けると、 大国主を引き渡すよう迫った。
大屋毘古神は大国主に
「須佐之男命の居られる根の堅州国へ行きなさい。きっと何とかしてくれるでしょうから。」
と言うと、木の股からこっそりと逃がしてくれた。

*1、木を組み合わせて固定する、クサビのような物。
*2、紀之国のこと。今の和歌山県辺り
*3、古事記には記述されていないが、この神は別名を五十猛神=いそたけるのかみ といい、
  須佐之男命の子で木の神とされている。

まだ途中ですがこの章はとても長いので区切り区切りやっていきたいと思います。
さてしつこい兄達に命を狙われたオオクニヌシは回りめぐってスサノオの所に行く事になります。
また根の堅州国とはしばしば黄泉の国と混同されるときがあります。
根は地中にあるし、黄泉も地下にありますしね・・・。どうなんでしょうか??
彼は母のもとで黄泉の大神になったのでしょうか??

根の国にやってきた大国主命は始めに須佐之男命の娘である、須勢理毘売=すせりひめ  に、出会った。
二人はお互いに顔を見ただけで一目で心を通じ合わせた。
須勢理毘売は早速、館にもどると父神に伝えた。
「父上、外にとても麗しい男性が来ております。」
「あれは葦原色許男=あしはらのしこお という男だ。」
「彼に嫁ぎたいと思います。」
娘の言葉におどろいた、父神は大国主に試練を与える事にした。
そして試練のすべてを乗り越えれば須勢理毘売との結婚を許してやろうと、約束した。
大国主はそれを承知した。

最初の試練は、「蛇の室=へびのむろ」で一晩過ごすというものだった。
だが、須勢理毘売がこっそりと渡してくれた「蛇の領巾=へびのひれ」を蛇達の前で 三度振ると彼らはすっかり大人しくなり、大国主は朝までゆっくりと眠った。

次の試練は、「呉公と蜂の室=むかでとはちのむろ」で一晩過ごすというものだった。
この時も須勢理毘売のわたしてくれた「呉公蜂の領巾=むかではちのひれ」を三度振ると 彼らは大人しくなった。

次の試練は、草原に放った「鳴鏑の矢=なりかぶらのや」*1 を取ってくるというものだった。
しかも大国主が草原に入るとそこに火を放った。
すっかり周りを火に取り囲まれて絶望している大国主を助けたのは鼠だった。
「内はほらほら、外はすぶすぶ。*2」と言う鼠の言葉に足もとの小さな穴を踏みしめると ボコリと大きな穴が現れ、その中に入って火の難を避けた。
しかもそこに先ほどの鼠がすっかり矢羽のなくなってしまった矢をくわえてやってきた。
聞くと子鼠たちが食べてしまったのだという。すっかり恐縮する親鼠に大国主は礼をいった。

そのころ須勢理毘売はきっと大国主は死んでしまったのだろうと嘆きながら 弔いの用意をして草原にやってきた。
父神である須佐之男命もまさかあの中で生きてはいないだろうと思っていた。
ところがそこに大国主が矢を持って現れ、畏まって父神に矢を献上したので、
すっかり感心した須佐之男命は彼をようやく自分の屋敷に招き入れた。

機嫌よく席についた須佐之男命は大国主を側に呼ぶと頭についた虱を取ってくれと頼んだ。
承知した大国主が父神の後ろに廻って見ると、虱に見えたものは百足であった。
そこで大国主はかねて須勢理毘売に教わっていた通り、椋の木の実と赤土を口に含み噛み砕いて 唾と共に吐き出した。
それを見た須佐之男命は百足を噛み砕くとはなんと勇敢な奴よ。と嬉しく思い 安心して眠り込んでしまった。

さて、大国主は須佐之男命がぐっすり眠ったのを確認すると、彼の髪を部屋の垂木に結びつけると 五百引(いおびき)*3 の岩で部屋の入口を塞いだ。
そして須勢理毘売を背負い、須佐之男命の
「生大刀=いくたち」「生弓矢=いくゆみや」「天の詔琴=あまののりごと」
を、持って逃げた。その時琴が木に触れて激しく音を鳴らした。
その音に飛び起きた須佐之男命は柱を引き倒し、部屋を崩壊させたが、髪の毛の結び目が なかなか解けずに手間取っている内に、大国主達は黄泉津比良坂まで逃げてしまった。

諦めた須佐之男命は、逃げる大国主の背に向かって、叫んだ。
「その太刀と弓矢をもって、兄神達を打ち払え!
そして、【大国主命】となって、また【宇都志国玉神】となってこの地を治めよ!
わが娘 須勢理比売は正妻として迎え、宇迦の山の山本*4 に壮大な宮殿を建てて住まえ!
高天原には常に気をくばれよ!!*5」

須佐之男命の言葉通り兄神達を打ち払った大国主はその地に国をたてた。
そして かねてからの約束通り八上比売を娶った。
しかし、八上比売は正妻の須勢理毘売に遠慮し、恐れ、せっかく生まれてきた子を 木の俣に挟むと実家に帰ってしまった。

それゆえ、その子を名づけて
木俣神=きのまたのかみ(またの名を御井神=みいのかみ)
という。

*1、放つと音をたてて飛んでいく矢。矢の先に鏑がついており、それが風を切って大きな音を出す。
*2、ほらほら→ほらあな、すぶすぶ→すぼまっている・・と言う事だと思います
*3、五百人もの人で引くほどの大岩
*4、出雲国風土記に出てくる、「出雲郡宇賀郷」付近
*5、原文の読み下しは「高天原に千木高知りておれ」これは祝詞の祈年祭(としごいのまつり)の中の一節 。千木とは神殿の屋根についている交差して空に伸びている木

世界中に良くある神話のパターンですね。
英雄に試練が与えられ、褒美となる比売が攻略のヒントや品物をくれる・・・^^。
さてオオクニヌシが受け取った「蛇領巾」「呉公蜂領巾」は実は「蜂比礼」「蛇比礼」として物部氏の神宝として伝わっています。
(領巾=比礼=ひれ→女性が首にかけているマフラー状の布) この「ひれ」は呪術的要素を持つとされていて、魔除けにも使われていたそうです。

ヤカミヒメのお陰で危機を乗り越えてきたオオクニヌシも最後の火攻めにはお手上げでしたね。
そこを救ったのがねずみです!どうもこのオオクニヌシはウサギやらねずみやら「人間ではない物」に 救われる傾向にあるようですね・・・(ーー;)ここなにげに重要です^^!この後も彼を助けるのは普通じゃないものが多いからです。不思議ですよね〜( ̄ー ̄)

無事試練を乗り越えたオオクニヌシはスサノオに気に入られたにも関わらず、三つの宝を持ってスセリヒメと逃げ出してしまいます。
この時の三つの宝はいわゆる三種の神器でしょうね!
太刀と弓矢は武力と政治的支配力を・・・琴は宗教的支配力を・・・それぞれ表しているのではと考えられています。
琴というのは降霊の時のアイテムです。ずっと後にでてくる仲哀天皇も降霊に琴を使っています。
降霊といっても幽霊を呼ぶのではなく、神を呼び出し交信するというニュアンスのものです。
おおっ!では、通信機か!!って・・・・おいおい・・・(^_^;)
でも・・・あやしい・・( ̄ー ̄)ふふ・・

どんな手段であれ三種の神器を渡してしまったということは、統治権を譲渡した事になるのではないでしょうか?事戸渡しをしてますしね。
言葉には呪力があるとされていますから、大声で大国主を認めたという事は重要です。
この時高天原の事にわざわざ触れていますが、これはなぜでしょう!
スサノオにはいずれやってくる いわゆる国譲りが予感できたのでしょうか??
原文読み下し文そのままからは何も読み取る事はできませんが、色々な事を考え合わせて、上記のような私訳になりました。
それでも常に尊敬して奉れ。という事なのか、反対に常に注意を払い警戒を怠るな。という事なのかは、残念ながらはっきり読み取れません。
ワタクシテキには後者を押したいのですがね。
この後スサノオは古事記にまったく出てこなくなります。黄泉比良坂を境にして追ってこれないという事は彼も母と同じように黄泉の国の住人となってしまったのでしょう。
黄泉・・・謎の場所ですね・・・
いわゆる仏教的な地獄とは違うようですし・・・。う〜ん・・

ところで後からも記述しますが、このスセリヒメは相当のヤキモチ焼きで気が強かったと言うことです。
ヤカミヒメはびびって逃げ出してしまいますしね^^;(追い出されたのかも・・・)
その時、残していった子供は一節によると、母親の手によって殺された事にもなっています。
御井とは井戸の美称です。木の俣に挟んだという事はいったい何を意味しているんでしょうか??
木の俣に挟まれた井戸と言う名を持つ子・・・?不思議な記述です・・・。

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