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第六分室へようこそ!早速続きを始めたいと思います。

須佐之男命の大蛇退治
追放された須佐之男命は、出雲の国の肥の河の川上にある、鳥髪の地に降り立った。
その時川に箸が流れているのを見つける。これはきっと上流に人里があるのだろうと考え
上流に沿って登っていくとはたして一軒の人家を発見した。
中を覗いてみると翁と婆が美しい少女を挟んで泣いている。
「あなた方はどなたですか?」
突然の訪問者の質問に驚きながらも翁が答えた。
「私は、国つ神である。大山津見神の子の足名椎=あしなづち と申す者。
妻の名は手名椎=てなづち と申す。娘の名は櫛名田比売=くしなだひめ と申す。」
「なぜ、泣いているのですか?」
「わが娘は始めは八人いたのに、高志(こし)の八俣の大蛇に毎年喰われて、今年はとうとう末娘のこの子の番になってしまったのだ。」
「八俣の大蛇とは?」
「目は赤いほおずきのように赤く光り、一つの身体に八つの頭をもっている。胴体は苔と杉に覆われ、その長さは八つの谷八つの丘にまたがっている。腹はいつも血でただれている。途方もない怪物だ。」
「なるほど・・・。」
須佐之男命はしばらく考えた後、足名椎にこう尋ねた。
「では、怪物を私が退治したら、その娘を私に頂けますか?」
「有りがたい申し出なれど、私達はまだあなたが誰なのかを聞いていないではないか。」
「私の名は、天照大神の弟の同母弟の須佐之男命。たった今天より降ってまいりました。」
ここに足名椎、手名椎の両神は畏まって、
「これは、御無礼をいたしました。ぜひわが娘を奉りたいと思います。」
と頭を垂れた。

さて須佐之男命はまず櫛名田比売の姿を湯津爪櫛(ゆつつまくし)*1 に変えて、自分の頭に差した。
次に足名椎、手名椎に命じて、八鹽折の酒(やしおおりのさけ)*2 をつくらせた。
次には家の周りに八つの門を持つ垣根を作らせ、門ごとに敷物を敷き、酒舟を置き、なみなみと八鹽折の酒を満たさせた。
そして、足名椎、手名椎を隠れさせると、自分は家の中で大蛇の来るのを待った。

やがて恐ろしい轟音と共に大蛇が現れた。
そこに酒を見つけた大蛇は八つの酒舟に八つの頭をそれぞれ 差し入れて、酒を飲み出した。
そこへ須佐之男命が飛び出して、十拳の剣*3で切りかかり見事に大蛇を倒した。
大蛇から流れ出た川は肥の川を血の色にそめた。
また、尾を切った時に剣が刃こぼれをおこしたのを怪しみ、切り開いてみると、
素晴らしい剣が一振り出てきた。
須佐之男命はこの剣を天照大神に献上した。
この剣の名は天之叢雲剣=あめのむらくものつるぎ という。*4

無事、大蛇を退治した須佐之男命は櫛名田比売と新しい宮殿を造るため、出雲の須賀にやってきた。
(この地は最初に来たときに須佐之男命がすがすがしい所だ、といったことから、須賀と命名された。)
須佐之男命が須賀の宮を造った時に読んだ歌は

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を *5

この宮の長官には足名椎を任命した。
また、足名椎には新たに名を賜った。その名を
稲田宮主須賀之八耳神=いなだのみやぬしすがのやつみみのかみ という。

その宮で、須佐之男命と櫛名田比売の間に誕生した神は
八島士奴美神=やしまじぬみのかみ

また大山津見神の娘、神大市比売=かむおほいちひめを娶って誕生した神は
大年神=おおとしのかみ
宇迦之御魂神=うかのみたまのかみ

ここから二代目

また八島士奴美神が大山津見神の娘、木花知流比売=このはなちるひめを娶って誕生した神は
布波能母遲久奴須奴神=ふはのもじくぬすぬのかみ

ここから三代目

また布波能母遲久奴須奴神が淤迦美神の娘、日河比売=ひかわひめを娶って誕生した神は
深淵之水夜禮花神=ふかぶちのみづやれはなのかみ

ここから四代目

また深淵之水夜禮花神が天之都度閇知泥神=あめのつどへちねのかみを娶って誕生した神は
淤美豆奴神=おみづぬのかみ

ここから五代目

また淤美豆奴神が布怒豆奴神=ふのづぬのかみ の娘、布帝耳神=ふてみみのかみを娶って誕生した神は
天之冬衣神=あめのふゆきぬのかみ

ここから六代目

また天之冬衣神が刺国大神の娘、刺国若比売=さしくにわかひめを娶って誕生した神は
大国主神=おおくにぬしのかみ
またの名を大穴牟遲神=おおなむぢのかみ
またの名を葦原色許男神=あしはらしこおのかみ
またの名を八千矛神=やちほこのかみ
またの名を宇都志国玉神=うつしくにたまのかみ

彼は、あわせて五つの名を持つ神である。

*1、清浄な歯の細かい櫛
*2、八回以上繰り返し蒸留した、強い酒
*3、後の草薙之剣=くさなぎのつるぎ
*4、現在この剣は「斬蛇の剣」(またの名を蛇の鹿正=あらまさ)と名づけられ、吉備の神部にあるとも、 吉備の石上布都魂神社にあるとも、伝えられる。
*5、八重の雲の沸き立つ出雲の国に私の大切な妻の家をたてたよ。その八重の雲で、
(大体こんな感じの意味・・・(^^ゞ・・)

ここでは誰でも知ってる八俣の大蛇の登場です。
この大蛇退治の話は治水と鉄の利権に絡ませて考えられる事が多いようです。
大蛇を曲がりくねっていて洪水を起こしやすい大河などに喩えているわけですね。
そしてその大蛇の体内から剣が出て来たと言う件を鉄に絡ませていると言うわけです。
教科書的な面白みも何もない解説です^^;。
確かにそう読めない事もありませんがこじつけと言う感も否めません。
曲がりくねった河が大蛇????どうして本当に大蛇が存在してはいけないのでしょう??
ほんとうに大きな蛇のようなものが存在したかもしれないじゃないですか!ねぇ・・・。( ̄ー ̄)
さて、その大蛇を退治したスサノオは
せっかく見つけたすばらしい剣をアマテラスに献上してしまいます。
ここでもスサノオの性格は素直に戻ってますね^^。二重人格でしょうか?
日本書紀では大蛇退治にあたってアマテラスに空を飛ぶ馬を借りたので
そのお礼的意味合いがあるようですが・・・。
スサノオはその後出雲に定着するようですね。
実は出雲の方角は大和の国から見て陰の極・・つまり西北の方角にあります。
大和にとっては縁起の良くない場所に(しかも黄泉の国への入口があるところ)にスサノオを定着させると言う事は、大和にとってスサノオは余り歓迎できない親戚と言う事でしょうか・・・?
その後は次々と子孫が生まれ、七代目に至って、皆さん良く御存知のオオクニヌシが誕生します。
またここでは始めて国つ神と言う表記がなされており、アマテラス系の天つ神と区別されています。
私は古事記の神代の相関図を書き出してみた事があるのですが、
面白い事にタカミムスビ−アマテラス系、
カンムスビ−スサノオ(オオクニヌシ)系の二つに綺麗に分かれることを発見しました。
なかなか面白いので皆さんも一度やってみては??

ところでオオクニヌシのたくさんの別名ですが、色々と意味があるようです。
☆オオクニヌシ=その字の通り、国を支配する者。
☆アシハラシコオ=そのまま訳せば、葦原の国の醜い男。
でもこの後、並み居る兄弟を差し置いてお姫様のハートを射止めるんだから、不細工だったとは考えられないのでは・・・?醜いとは不細工と言う意味ではなく、高貴な方々を直接見るのは失礼にあたるという事で、余り見ないようにしたことから、見難い(みがたい)が見難い(みにくい)に変化していったという説も。
☆ヤチホコ=字面の通り多くの矛を持つ、と言う意味。
剣王国と呼ばれた「出雲」を象徴する名前では?! 荒神谷からは大量の銅剣が発見されていますし・・・。
☆ウツシクニタマ=今、現実にここにある神の魂。と言う意味。
今ここに神の魂が!!神の魂とは具体的になんでしょうね〜〜( ̄ー ̄)ふっふっふ・・まさかUFOとか・・いや冗談じゃなく! オオクニヌシの件になるとそう言う描写が増えるんですよ・・・^^
☆オオナムチ=これは字だけを見てるとさっぱりわかりませ〜ん。
でも私が思うに日本書紀では「大己貴」 と書くんですね。これならば、まず「大(おお)」と「貴(むち)」は美称にあたるので、残るは「己(な)」だけ、「己」と言うのは地主を指して言う言葉という説もありますので、立派な大地主様って処でしょうか・・・?
でも、例の金印の「漢の倭の”奴”の国王」にも「な」が出てくるし、以外と深い名前かも・・・(ーー;)
さあ!次は因幡の白兎のお話^^。この辺は良く知っている話が多くて楽しいですね!

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