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第二十六分室へようこそ!どうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。

成務天皇=せいむてんのう

若帯日子命=わかたらしひこのみこと、は近つ淡海*1の志賀の高穴穂宮*2において天皇となり政を行なった。
この天皇と
穂積臣の祖、建忍山垂根=たけおしやまたりね、の娘
弟財郎女=おとたからのいらつめとの間に誕生した御子は
和訶奴気王=わかけぬのみこ

この天皇は建内宿禰=たけうちのすくね、を大臣として国を細かく分け、各国に国造(くにのみやっこ)を定めた。
また国々の境にも縣主(あがたぬし)を定めた。

この天皇の御歳、九十五歳(ここのそぢまりいつとせ)。
御陵は沙紀の多他那美(さきのたたなみ)*3にある。

*1、都に近い所の淡水の海・・つまり琵琶湖
*2、滋賀県大津市
*3、奈良県生駒市

成務天皇は景行天皇の息子です。最初の方に出てきますね(^^)
あんまり前すぎて忘れてしまいそうですが・・・(^_^;)
この天皇の実在性は大変薄いと言われています。
薄いといえば次の仲哀天皇もそうなんですけどね・・・(ーー;)
女傑の神功皇后が奥さんで早死にしてしまうその名の通り可哀相な天皇です(苦笑)
あのヤマトタケルの息子だというのに・・・とほほ・・
さて!成務天皇ですが、この天皇の項で一番注目すべきは「建内宿禰」です。
彼は家臣の中では大臣という朝廷でもっとも最高位の位についている謎の人物です。
このあともず〜〜っと朝廷内で実権を握りつづけ、なんと280〜300歳までも生きた!
といわれているむちゃくちゃに怪しい奴なのです。
どんなに怪しいかは次の仲哀天皇の項で明らかになりますよ・・・( ̄ー ̄)vふ・・

仲哀天皇=ちゅうあいてんのう

1、后妃皇子女
帯中日子命=たらしなかつひこのみこと、は穴門の豊浦宮(あなどのとよらのみや)*1と
筑紫の訶志比宮(ちくしのかしいのみや)*2において天皇となり、政を行なった。

この天皇と
大江王=おおえのみこ、の娘、
大中津比売命=おおなかつひめのみこと、との間に誕生した御子は
香坂王=かごさかのみこ
忍熊王=おしくまのみこ

また
息長帯比売命との間に誕生した御子は
品夜和気命=ほむやわけのみこと
次に
大鞆和気命=おおともわけのみこと
(またの名を品陀和気命=ほむたわけのみこと)
この御子の名前が大鞆と言うわけは
生まれつきその腕に「鞆」*3、のような痣があった事から名付けられた。
この御子は御母の体内にいるときから国の為に闘いの準備をしていたという事で
後に胎中天皇と呼ばれる。

この天皇の御世に淡道の屯倉(あわじのみやけ)*4をさだめる。

*1、下関市長府
*2、福岡氏香椎
*3、鞆とは弓を引く時に腕につける皮製の武具
*4、屯倉を定めるという事はその土地を私有地にしてその時から産出される作物などが私有財産になるという事である。

さてさて、先の成務天皇の所でもちょっと触れましたが、仲哀天皇はあのヤマトタケルの息子です。
成務には男子が誕生しなかったために傍流であったタケルの息子におはちが回ってきたという感じですか・・・(^^ゞ
しかしこの仲哀は倭で政権を取る事はできませんでした。
彼はすぐに今の福井県の敦賀というところに宮を立てています。
屯倉も倭から離れた淡路に置いています。
そして福岡県の香椎に移りそこで生涯をおえることとなります。
何故彼は倭で政治を行なえなかったのでしょうか・・・?
また彼が命を落としたのは香椎ですが御陵は南大阪にあると書かれています。
(神功は奈良県なのに!!)
しかし福岡の香椎宮にも彼は祭られています・・・。
神功皇后と彼を殺した住吉の大神と一緒に。また境内にはあの武内(建内)神社も・・・。
この天皇の項はほとんどを神功に占められていますが、
彼自身を隠さねばならない何かがあったとは 考えらえないでしょうか・・・( ̄ー ̄)にやり・・・

ちょっと考察が先行してしまいました・・(^_^;)
次の項は仲哀が命を落とす所から始まります。

2、神功皇后=じんぐうこうごう、の新羅征討
神功皇后は神をその身体に呼び寄せ神の言葉を伝える事ができた。

さてある日、天皇は筑紫の訶志比宮(ちくしのかしいのみや)において熊曾国を討とうと思い、神のお告げを求める事にした。
祓い清めた祭場の闇の中で天皇が琴を弾き、建内宿禰が神に詔を求めると、 神功皇后は神の言葉を伝え始めた。

「ここから西の方に国がある。金銀をはじめとして目の眩むほどの様々の素晴らしい宝物がその国にある。私はその国を帰服させよう。」

しかし天皇は
「どんなに高い場所から見ても、ここより西の国は私には見えない。大海があるばかりではないか。 お前は偽りの神であろう。」
そう言って怒り、琴を向こうに押しやってしまった。
するとかの神はひどく怒り、
「この国はお前のようなものが治めるべきではない!お前は人間の行くただ一つの道、即ち死の国へ行け!!」
それを聞いた建内宿禰は慌てて琴を天皇に渡して言った。
「大君よ!琴をおひきなされ!」

天皇はしぶしぶ琴を鳴らし始めたが程なく琴の音が聞こえなくなった。
慌てて火を灯し天皇を見ると彼はすでに事切れていた。

建内宿禰は急ぎ殯宮(あらきのみや)*1を建造し、筑紫の国より様々な供え物を取り集め、
生剥(いきはぎ)、逆剥(さかはぎ)、阿離(あはなち)、溝埋(みぞうめ)、尿戸(くそへ)、
上通下通婚(おやこたわけ)、 馬婚(うまたわけ)、牛婚(うしたわけ)、鶏婚(とりたわけ)、犬婚(いぬたわけ) などの様々な罪*2を祓い、
筑紫の国上げての大祓いを行なうと、たちまちのうちに天皇は葬られた。

その後神功皇后と建内宿禰は改めて神を呼び、神託を乞うと たちまち先日と同じように神は現れた。
「西の国へ行け。その国は汝の腹の中の子のものぞ。」
そこで
「恐れながら、大神の御名をお聞きしたい!」
と建内宿禰が叫ぶと神は答えた。
「このことは天照大神の御心である、また底筒男、中筒男、上筒男の三柱の大神*3の御心ぞ、
今、誠にその国を汝が求めようと思うのなら、天神、地神、山神、河海神、諸々の神々に供え物をし、我が魂を船に乗せ、真木の期の灰を瓢にいれ、箸と木の葉で作った皿を大海に流すがよい。」

神功皇后は神に教えられた通りのことを行なうと、自らは男装し、
軍を整え、軍船を揃え、西の大海へ出航した。
大小の様々な魚たちが集まり船を先導し、また波が船を押し進めてくれたのでたちまちのうちに 新羅の国に上陸できた。
新羅の国の国王は大変驚き畏まり、降伏を申し出て、今後は天皇の下で天皇の乗る馬の飼育人として働く事を約束した。
これで、新羅の国は今後御馬甘(みまかひ)*4として、
百済の国は渡の屯倉(わたりのみやけ)*5として、各々天皇に仕える事となった。

神功皇后は新羅の国王の宮殿の前に持っていた杖を突き刺し、
墨江大神の荒御魂を国を守る神として祭り、帰路についた。

帰りの航海の途中、神功皇后の御子が生まれそうになったが、皇后はまだ神から仰せつかった使命を終えていないといい、
帯に石を挟み御子が生まれてくるのを押しとどめた。
そうして、ようやく筑紫の国についたところで御子は誕生した。
その地を名付けて、宇美(うみ)*6という。
その時帯に挟んだ石は今は筑紫の国の伊斗村(いとむら)*7にある。

また神功皇后一行が筑紫の末羅縣(まつらのあがた)の玉島里(たましまのさと)に至ったとき、 一行は河の側で食事を取った。
その時に皇后自ら帯の糸を一本抜き取りその先に飯粒をつけて鮎を釣った。
それが卯月の初めのころであった為、今でもこのあたりの女性は卯月のはじめには帯の糸を抜き、飯粒をつけて鮎を釣る習慣があるという。

*1、もがりの宮のこと。天皇が死んだあと葬るまでの間死体を安置しておく所。
*2、生剥・逆剥=生きたまま獣の皮を逆さに剥ぐ行為。阿離・溝埋・尿戸=田の溝を埋め、畔を壊し、神聖な場で汚物を撒き散らす行為。
上通下通婚・馬婚・牛婚・鶏婚・犬婚=親子や獣と交わる不倫行為。
*3、住吉大神のこと、海上の守り神
*4、天皇の乗る馬を飼育する部民
*5、海の向こうの天皇の領地
*6、福岡県粕屋郡宇美町
*7、福岡県糸島郡深江のあたり

Σ( ̄□ ̄||)はっ!!これはまさに仲哀殺人事件!!(笑)
いえいえ・・冗談ではないですよ・・
だってこの事件を見ていたのは建内宿禰と皇后だけ。
しかも暗闇で行なわれた殺人!!
これを怪しいといわずしてなんといいましょうか!!
また事後処理のあまりにもすばやい対応はまさに計画殺人!!
普通天皇の殯は1年以上は行なわれます。長いものは何年も・・・。
それなのに仲哀の場合はあっという間に葬られてしまいます。
これは彼がいわゆる「三韓征伐」に反対していたからではないでしょうか?

神功皇后の三韓征伐といえば有名ですが、(書紀なんかは一つ項をさいてますからね・・)
あまり信頼性のある話ではありません。
では何故仲哀は殺されたのでしょうか??

よく彼女の存在は架空の物として扱われていますが、
私はまったくの作り物とは思えないんですよね・・・。
もしこの時期に力を持った女首長が存在していたとしたら(卑弥呼じゃないですよ・・(^^ゞ・・)
彼女が次の応仁の河内王朝の基礎を築いたのだとしたら・・・
あながちない話じゃないでしょ(^^)
凄い宰相の建内宿禰もいる事だし・・・

そうすると大和王朝の流れである仲哀は邪魔になりますよね・・・。
ましてや仲哀が大和からつれてきた女の子供を日嗣に考えてたとしたら・・
彼女は自分の息子の為に頑張ったのです。きっと・・・

なんだかこの項は解説が先行しがちですが・・(^_^;)
彼女はこのあと息子の為にまた一働きする事になります。
さすが伝説の烈女!!(笑)



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