前の章へ


第十二分室へようこそ!早速続きを始めたいと思います。

建御雷神=たけみかずちのかみ
再び八百万の神を集めた天照大神は思金神に知恵を求めた。
「次はどの神を遣わすべきか?」
「申し上げます。天の安の河の河上の天の石屋に居ります、
伊都之尾羽張神=いつのをはばりのかみ を遣わすのがよいかと思います。
また、その神の子にあります、
建御雷之男神=たけみかずちおのかみ でも宜しいかと思います。
しかし、この神々は河の水を逆流させて塞き止めて隠れておりますので、誰もあえません。
そこで、天迦久神=あめのかくのかみ*1 を伝令にしてはいかがでしょうか?」
早速、天照大神が天迦久神を遣わして問うてみると、
「かしこまりました。しかし、私よりも我子の建御雷が適任に思えます。
彼を早速遣わしましょう。」
と、即座に了解した。
天照大神は喜んで、建御雷神に天鳥船神=あめのとりふね を添えて、地上に遣わした。

*1、鹿を神格化した物と思われる

さあ!第三回目の遠征隊がやってきました(^^ゞ
ここに登場するイツノオハバリノカミは実はあの「カグツチ」を殺した十拳剣が神格化した神です。
そしてタケミカヅチはその滴る血から誕生した神です。彼等は常に殺戮の場に登場しますね。
ヒットマンみたいな物でしょうか(^_^;)?彼は喜んで戦い(?)の場に出向いていきますが、その際あの「あやしい」アメノトリフネを伴っていきます。鳥のように空を飛ぶ船に乗って雷神登場!!ああっ☆ またSFになっていくぅ〜。
所でホンとに余談ですが、タケミカヅチと一緒に「血」から誕生した神に「クラオカミ」がいますが、この神は京都の鞍馬の貴船神社の祭神となっています。そして鞍馬には・・・金星からきた魔王の祠があるのを御存知ですか!!!木の根道を上がっていくと、いまでもちゃ〜んと魔王殿が存在します。
面白いでしょう・・・ふっふっふ( ̄ー ̄)

事代主の服従
出雲国の伊那佐の小浜(いなさのおばま)に降り立った二柱の神は十拳剣を逆さに波にたて、その剣先にあぐらをかき、大国主神に向って言った。
「天照大神と高木神(高御産巣日神)はこう申された。汝が治めるこの国はもともと私の国である。
そこで、私の子が治めるのが正しい事だと思うが、汝はどう思うか?」
これに対する大国主の答えは
「私もそう思います。しかし、今は我が子の事代主が国主であるので、彼の意見を聞かなくてはなりません。彼はいま御大の前(みほのさき)に釣りにいっており、まだ帰ってきておりません。」
そこで建御雷神は天鳥船神を遣わして、事代主をつれてきてきいた。
事代主は父神に向って、
「わかりました。この国は天つ神の御子に差し上げましょう。」
そう言うと逆手を打ち*2、その乗った船を青垣に変えるとその中に隠れてしまった。

*2、呪術的な要素をもっている、呪文でもって、船を青垣に変えてしまうのである。

哀れなコトシロヌシです・・。
呑気に釣りを楽しんでいる所を突然連れてこられて・・・国譲りを迫られて・・・
凄く素直なコトシロヌシでしたが、許可の言葉をタケミナカタではなく、オオクニヌシに向っていったのは、せめてもの抵抗でしょうか(^_^;)?
所で彼は変わった隠れ方をしていますが、このコトシロヌシの祭られている美保神社の縁起にはコトシロヌシは入水自殺した事になっているそうです。
隠れた・・というのは貴人の死を意味する時もありますので、意味深ですねぇ・・・。

建御名方神=たけみなかたのかみの服従
再び建御雷神は大国主に聞いた。
「事代主以外に意見を聞くべき子はいるか?」
「もう一人、建御名方神が居ります。」
と、大国主が答えたその時、建御名方神が千引の石(ちびきのいわ*3)を携えて、やってきた。
そして、建御雷神に向って
「私の国に来て、こそこそと詰まらん事を言っているのはおまえか!私と力比べをしろ!」
というなり、建御雷神の手をつかんだ。
するとたちまち、建御雷神の手は、氷のように堅く冷たく、また剣のように鋭い刃となった。
そして、ひるんだ建御名方の腕を取ると葦の茎のように握りつぶし、投げ飛ばした。
恐れた建御名方が逃げ出すと、何処までも追いかけ、とうとう科野国の州羽の海(しなののくにのすわのうみ)*4 で追い詰めた。
そこで、建御名方神はこう言って約束した。
「恐れ入りました。私はこの地から今後一切出ませんので、命だけは助けてください。大国主神と事代主のおっしゃる通りにします。葦原中国は天つ神の御子に差し上げます。」

*3、千人でやっと持ち上げる事が出来るほどの岩
*4、長野県の諏訪湖

一人抵抗をしたタケミナカタもとうとうやられてしまいます。
この神は前前から書いているようにここで突然出てくる謎の神です。(オオクニヌシの系譜に載ってない) 彼は雷神で、タケミカヅチやアジスキタカヒコと同じです。同族・・というべきでしょうか?
さて、健闘空しくタケミナカタは長野県に追いやられてしまい、現在の諏訪神社の祭神となっています。
皆さんも御存知かと思いますが、この神社では巨木を使った変わった祭りが色々とあります。まさに!謎謎謎の神なのです・・・。

大国主の国譲り
「さて、汝の子等は天つ神に従うといっているが、汝の答えはどうか?」
「わかりました、子供達の言う通りにいたしましょう。
ただ私の住処として広大な宮殿をたてて、頂きたい。私はその奥深く隠れて二度とでてこないようにしましょう。またこの国の国つ神達は事代主に従うので、反抗する物はいないでしょう。」
そこで出雲国の多藝志の小濱(いずものたぎしのおばま)に天の御舎(あめのみあらか)*5 を造った。
また水戸神=みなとのかみ の孫の櫛八玉神=くしやたまのかみ が料理人になって、鵜に変化して海の底に入り、海底の赤土で多くの皿をつくり、若布やその多の海草で火を起こしてこう言った。

この我がきれる火は 高天原には 神産巣日神の御親命の とだる 天の新巣の煤の 八拳垂れるまで 焼きあげ 地の下は 底つ石根に 焼きこらして たく縄の 千尋縄打ち延べ 釣せし海人の 口大の 尾翼鱸 さわさわに ひきよせあげて 打竹の とををとををに 天の眞魚咋 獻る

【この私が起こした火は高天原の神産巣日神の竈の煤が八拳ほども垂れるほど、地の底に岩となってたまるほども燃えつづけ、白縄で海人が吊り上げた口の大きなスズキを料理して、盛った籠がたわむほどになるでしょう。】

この後、建御雷神は高天原にもどり、葦原中国を平定した事を、報告した。

*5、出雲大社のこと

大切な二人の後継ぎを次々と失い、とうとうオオクニヌシも追い詰められてしまいます。
ここでは遂に人ではないものの救いの手は現れませんでした。
彼は国譲りに当たって一つの条件を出します。それが今に残る出雲神社です。
そして自ら宮殿の奥深く「隠れて」しまうのです。実際出雲神社に行ってみると、祭神である、オオクニヌシが随分奥深くに祭られているのに気付きます。
彼は今いったいどんな気持ちで出雲神社の奥に押し込められているのでしょうか・・・?
彼は本当に「自ら」隠れたのでしょうか?
そしてこの後・・・
オオクニヌシにつながったこのスサノオのラインはぱったりと表には出てこなくなってしまいます。

 
次の章へ
inserted by FC2 system