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第十一分室へようこそ!早速続きを始めたいと思います。

葦原中国の平定

天菩比神=あめのほひのかみ

ある日、天照大神は地上の葦原中国を見て、
「この豊葦原の千秋長五百秋の水穂国*1 は本来私の子供が治めるはずのものである。」
と言った。
そこで御子である正勝吾勝勝速日天忍穂耳命=まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと を呼んで地上を見に行かせた。
そこで正勝吾勝勝速日天忍穂耳命は天の浮橋に立って地上を観察したところ
「地上は随分騒がしいようだ・・・。」
とすぐに高天原に帰ってきてしまった。

そこで高御産巣日神と天照大神は天の安の河の河原に八百万の神を集めて話し合いをした。
「葦原中国は我が子の治めるべき国なのに、国つ神達が我が物顔で暴威を振っている。
何とかして取り戻したいのだがどうしたら良いだろう。」
すると思金神=おもいかねのかみ が
「天菩比神=あめのほひのかみ を遣わして説得させたらよろしいかと思います。」
と提案したので、早速この神を地上に向わせた。

しかし天菩比神は大国主神にへつらい従って、三年たっても復命しようとしなかった。

さて!アマテラスは今まで全然見向きもしなかった地上の国が豊かになってくると気になってしようが無くなったようです^^;。
海と夜以外は私がお父さんからもらったのよ!と言う意識があるからでしょうか、 当然の如く奪回に走ります。
そこでまず偵察に向わされたのはあのスサノオとの誓約の時に誕生した オシホミミでした。
しかし彼は余り乗り気ではなかったようですね。
そりゃそうでしょう。誰が考えたって横車ですからね(ーー;)
ホンでその次に出動を命じられたのも誓約の時のホヒノカミです。
彼にいたってはオオクニヌシがわについてしまって帰ってこないと言うありさま・・・^^;。
媚へつらって・・と言う可哀相な描かれ方をしているホヒノカミですけどそりゃあんまりでしょう(^_^;)
ところで・・・記には一人称で書かれていますが、私は戦いがあったのではないかと考えています。
オシホミミもホヒノカミも将軍として遠征したのではないかなぁ・・・と。その結果、負けたか説得されたかして上記のような結果になったのではないかなぁ・・・。
この時は悉くオオクニヌシ側の勝利といえますが、こんな事で諦めるアマテラスじゃありませんでしたね・・・(苦笑)次々と刺客は送りこまれるのでした^^;。

天若日子=あめのわかひこ
天照大神と高御産巣日神は再び八百万神を集めて言った。
「天菩比神は全く連絡無しで戻ってもこない。どうしたらよいだろう。」
すると思金神が
「天津国玉神=あまつくにたまのかみ の子、天若日子=あめのわかひこ を遣わしたら宜しいのでは?」 と、提案した。

天若日子は
天之麻迦古弓=あめのわかこゆみ と
天之波波矢=あめのははや とを賜り、地上に向った。
しかし、天若日子も
大国主の子、下照比売=したてるひめ を娶ると、住み着いてしまい、八年たっても復命しようとしなかった。

天若日子からの連絡がないので高天原は
雉鳴女=きじのなきめ を伝令に出すことにした。
雉鳴女は天若日子の家の庭の湯津楓(ゆつかつら)の木にとまると大声で天つ神の伝言を叫び始めた。
それを聞きつけた
天佐具売=あめのさぐめ*2 は
「大変不吉な鳥でございます。射殺しておしまいください。」
と天若日子に告げたので、彼は天照大神より授かった弓と矢で雉を力いっぱい射た。
その矢は雉を射ぬいた後も勢いを失わず、天にまで届き、高木神(高御産巣日神の別名)=たかぎのかみの足元に落ちた。
高木神はその矢がすぐに誰の物であるかを見抜き
「この矢が若日子のものであり、正しき心で射たのなら当たらないだろう。邪き心で射たのなら必ず若日子の命を奪うだろう。」
と言うと、地上に投げ返した。
矢は真直ぐに若日子の胸を貫き、まだ朝の床についていた彼を死に至らしめた。

天若日子の妻である下照比売の嘆きは激しかった。
その泣き声は風にながれて、天までも届き、
そのお蔭で若日子の父神である天津国玉神とその家族は若日子の死を知る事ができた。

彼らは嘆き悲しみ、すぐに地上に降りてくると、喪屋をたて、
河鴈=かわがり(雁=がん)を岐佐理持=きさりもち*3 とし、
鷺=さぎ を掃持=ははきもち*4 とし、
翠鳥=そにとり(カワセミ)を御食人=みけびと*5 とし、
雀=すずめ を碓女=うすめ*6 とし、
雉=きざし(キジ)を哭女=なきめ*7 とし、
八日八晩の間、歌舞を催した。

この時阿遲志貴高日子根神が、友人である若日子のための弔いにやってきた。
この二人は容姿が非常によく似ていたので、若日子の家族達は我が子が生き戻ったかといって、
阿遲志貴高日子根神=あじすきたかひこねのかみ に取りすがって喜んだ。
この事に阿遲志貴高日子根神はいたく腹を立て、
「この私を死者と間違えるとは許しがたし!」というなり、剣を抜くと喪屋を切り伏せ、足で蹴飛ばした。

この時出来た山が美濃国の藍見河の川上の喪山*8 である。
またこの時の剣は
大量=おおはかり(またの名を神度剣=かむどのつるぎ) と言う。

その後、阿遲志貴高日子根神は怒りの余り、何処かへ飛び去ってしまった。
  そんな兄を思い、同母妹の高比売命=たかひめのみこと は歌を残した。

天なるや 弟棚機の うながせる 玉の御統 御統に 穴玉はや み谷 二渡らす 阿遲志貴高日子根神ぞ

【天の国の機織の女(天照大神?)が首にかけた玉の首飾りの光りよりも輝き、谷を二つ渡ってもまだ輝きがみえるような、阿遲志貴高日子根神はそんなすばらしい神だったわ。】

*1、豊かな葦原で稲穂が豊かに実る素晴らしい国
*2、書紀には天探女と記されている。あらゆる物から吉兆を探り出す巫女のような存在
*3、葬送の時、死者の食べ物を運ぶ役目をするもの
*4、箒をもち、清めの役目をするもの
*5、死者に備える餅を作る役目のもの
*6、米をつく役目のもの
*7、場を盛り上げる為に大声で泣き喚く役目のもの
*8、岐阜県長良川の上流の山

さてさて・・・三番目にやってきた使者はオオクニヌシの娘と結婚までしてしまいます。
次々とやってくる使者たちが悉くオオクニヌシ寄りになってしまうのはどうした事でしょう??
やっぱりオオクニヌシのお人柄??^^かな?
まあ、とにかく今度はアマテラスも少々慎重になって、間者を送りこんできますね。
見つかってやられちゃいますけど・・。でも結局ワカヒコも殺されてしまいますが・・・(T_T)
この時の神を狙って射た矢が投げ返されて射た物を殺す、と言う、(ニムロッドの矢)の説話は割と世界中に見られます。
ここであの、あやしい(笑)アジスキタカヒコの登場です^^。
登場するなり何処かへ行ってしまいますが、この後突然と現れるのがタケミナカタです。
これまでの系譜には登場しなかったこの神は国譲りという重大事件の時に大きな役割を果たします。アヂスキタカヒコも雷神、タケミナカタも雷神、この一致はどういう事でしょう??
私はこの二人はここで入れ替わりをしたのではないか!と思います。些細な事でわざと怒ったふりをして、姿を隠し再び名を変えて現れる・・・。深読みのしすぎ??(^_^;)・・
話が前後して申し訳無いのですが、ワカヒコの葬送の様子ですが、変わっていると思いませんか^^。鳥イコール空を飛ぶもの・・・という考え方から、魂を天に運ぶ者、という事なのでしょうか?鳥葬をあらわすのでは・・・?という説も何処かで読んだような・・・。今でも京都の祇園祭りでは鷺の仮装をして舞を奉納する催しがあります。

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