古事記   上つ巻
序 第一段 稽古照今
   序 第二段 古事記撰録の発端
序 第三段 古事記の成立

以上の序文は「太安万侶」が第40代「天武天皇」に命じられて、
「稗田阿禮」の口述を筆記し編集し、古事記にまとめたので献上いたします。
と、言うことが書いてあります。
実際に献上されたのは第43代の「元明天皇」の時でしたが・・・
    時に和銅五年(712年)正月廿八日のことでした。
この「稗田阿禮」(ひえだのあれ)と言う人がまた謎の人で
男なのか女なのかも判ってはいません。
天武帝の頃、年は28と書かれてはいるのですが、それ以外は
一度目や耳にしたことは決して忘れなかった。ということだけしかわからないのです。
この稗田阿禮が古い国の歴史書である所の 「帝記」「国記」を読んでいたのでそれを聞き写した。
と言う事なのです。
序文からしていきなり謎の人物・・・
侮れないでしょ?!「古事記」・・・
ではここから本文へ!!


別天つ神五柱*1
天地(あめつち)始めて開けしとき、高天原に成れる神の名は・・・
天之御中主神。(あめのみなかぬしのかみ)
次に・・・
高御産巣日神。(たかみむすびのかみ)
次に・・・
神産巣日神。(かんむすびのかみ)
この三柱の神は・・・
皆独神と成りまして身を隠したまひき・・・・
次に國、稚く浮きし脂の如くして、海月なす漂へる時、
葦牙の如く萌えあがるものによりてなれる神の名は・・・
宇摩志阿斯訶備比古遲神。(うましあしかびひこぢのかみ)
次に
天之常立之神。(あめのとこたちのかみ)
この二柱の神もまた、独神と成りまして、身を隠したまいき・・・・

上の件の五柱の上は、別天つ神。

神世七代
次に成れる神の名は・・・
国之常立神。(くにのとこたちのかみ)
豊雲野神。(とよくもぬのかみ)
この二柱の神もまた、独神となりまして、身を隠したまいき・・・
次になれる神の名は・・・
宇比地邇神。(うひぢにのかみ)妹須比智邇神。(いもすいぢにのかみ)*2
次に・・・
角杙神。(つのぐいのかみ)妹活杙神。(いもいくぐいのかみ)
次に・・・
意富斗能地神。(おおとのぢのかみ)妹大斗之辨神(いもおおとのべのかみ)
次に・・・
於母陀流神。(おもだるのかみ)
次に・・・
妹阿夜訶志古泥神。(いもあやかしこねのかみ)
次に・・・
伊邪那岐神。(いざなぎのかみ)妹伊邪那美神。(いもいざなみのかみ)

上の件の国之常立神より下、伊邪那美神より前をあわせて、
神世七代といふ・・・・・

*1,神様は一人二人ではなく一柱・二柱と数えます。
*2,「妹」というのは奥さんのことで大体前に記述されている神さまと 夫婦になっています。

はい!ここまでで気になる所はありませんか?
私はあります!!(笑)
まず一つ、独神になるとは?身を隠すとは?いったいどう言うことなんでしょうかねぇ。
また別天つ神五柱は古事記と双璧をなす、もう一つの歴史書「日本書紀」には出てこない神様たちです。
また、最初に誕生した「天之御中主神」はこの後、まったく出てこない神様です。
この ギリシアでは、「ガイア」に、中国では「盤古」に当たる創造神はいったいどこへいってしまったのでしょう??
「高御産巣日神」「神産巣日神」は後にもちょこちょこでてくるというのに・・・
大きななぞですねぇ。

さて、次はいよいよ日本の誕生です(^.^)

伊邪那岐命と伊邪那美命
国土の修理固成

ここに天つ神諸の神々が伊邪那岐命と伊邪那美命、二柱の神に、
「この漂へる国を治め、作り、固め、成せ。」と詔りて
天の沼矛(あめのぬぼこ)を賜ひて、言依した。
それから 二柱の神は天の浮橋に立ち その沼矛を指し下ろして畫きまわせば
鹽(しお)こをろこをろと音を立てて(矛を) 引き上げた時 その矛の先より滴り落ちる鹽が
重なり積もって島とななった。これを淤能碁呂島(おのころしま)という。
二神の結婚
その島に天降って、天の御柱を見立て 八尋殿*1をたてた。
そしてその妹伊邪那美命に
「汝が身は如何にか成れる。(どうつくられているか?)」と 問いかけると、
「吾が身は 成り成りて成り合わざる處 一處あり。(足りない所が一つあるようだ)」と 答えた。
それを聞いて伊邪那岐命は
「我が身は 成り成りて成り余れる處 一處あり。故 この吾が身の成り余れる處をもちて
汝が身の成り合わざる處にさし塞ぎて、国土を生み成さんとおもふ。生むこと如何に。
(わたしは余っている所があるので、足りない所を余っている所で塞ぎ国を生もう。いいかな?)」
と聞いた。伊邪那美命はよいでしょう、と答えた。
しかし伊邪那美命の方から先に声をかけたため、最初に生まれた子は水蛭子(ひるこ)*2であった。
二人はこれを葦の船に入れて流した。次の子は淡島*3であった。
この二人の子は子の数には入れない。
*1、一尋は人が両手を一杯に広げた長さ。しかし大体において「8」という数は大きい・多いという意味で使われることが多い。この場合は広大な神殿との意味
*2、骨のない子・・と言う意味らしい・・恵比寿のモデルともいわれている。
*3、泡の様に消えてしまう島・という意味か??
はぁ〜なかなか上手く訳せない・・・(ーー;)
とりあえずここはおなじみのイザナギとイザナミが日本という国を作り始めるところです。
この世界創生譚は大体において世界に共通するようです。
最初に出来た淤能碁呂島は今はどこの島に当たるのかわかりません。
今の淡路島がおのころ島との異名をもっていますが、古事記においては後に別名で出てきます。
しかし・・・女が先に声をかけたら「ダメ」という辺りが編纂当時の思想が如何に中国思想だったかが わかりますね〜。男尊女卑が普通だったんでしょう。よく出てくる3・5・7という数字も奇数を尊い数と考える中国の発想ですね。
また葦の船で子供を流してしまうという神話も世界各国(特に東南アジア)にあるようです。
さて!次はぼこぼこ子供が生まれます。名前を書くのがたいへんだ・・・(^^ゞ

大八島国の生成
さて二人の子を失敗した、伊邪那岐命と伊邪那美命は天の忠告どおり、次には男神から声をかけて 次々と国を生んでいった。
まず生まれたのは、
淡道の穂の狭別島(あわぢのほのさわけしま)*1
次に
伊予の二名島を生んだこの島は体は一つだが顔は四つあった。
顔にはそれぞれ名前がある。
伊予国(またの名を愛比売=えひめ)・讃岐国(またの名を飯依比古=いいよりひこ)・
粟国(大宜都比売=おおげつひめ)・土佐国(建依別=たけよりわけ) と、言う。*2
次に
隠岐の三つ子の島を生んだ。(またの名を天之忍許呂別=あめのおしころわけ)
次に
筑紫島を生んだ。この島も一つの体に顔が四つあった。名を
筑紫国(またの名を白日別=しらひわけ)・豊国(またの名を豊日別=とよひわけ)・
肥国(またの名を建日向日豊久士比泥別=たけひむかひとよくじひねわけ)・熊曾国(またの名を建日別=たけひわけ)という。*3
次に
壱岐の島を生んだ。(またの名を天比登都柱=あめのひとつはしら)
次に
対馬を生んだ。(またの名を天狭手依比売=あめのさでよりひめ)
次に
佐渡島を生んだ。
次に
大倭豊秋津島=おおやまととよあきつしまを生んだ。(またの名を天御虚空豊秋津根別=あまつみそらとよあきつねわけ)*4
これまでに生まれた、八つの島を合わせて、大八島国=おおやしまくに、と言う。
またしばらくして
吉備兒島が生まれた。(またの名を建日方別=たけひかたわけ)
次に
小豆島を生んだ。(またの名を大野手比売=おおのでひめ)
次に
大島を生んだ。(またの名を大多麻流別=おおたまるわけ)
次に
女島=ひめしまを生んだ。(またの名を天一根=あめのひとつね)
次に
知訶島を生んだ。(またの名を天之忍男=あめのおしお)
最期に
兩兒島=ふたごのしまを生んだ。(またの名を天兩屋=あめのふたや)
国生みはこれで完了。
*1、たぶん今の淡路島
*2、たぶん今の四国
*3、たぶん今の九州
*4、たぶん今の本州
さて、この日本の国が次々生まれる中で、気付くことがありませんか?そう、北海道がありませんね。
この当時(古事記が編纂された当時)まだ北海道の存在が確認されていなかったことがわかりますね。
東北が日本の最北と思われていた時代でした・・・。
また、淡路島をかわきりに近畿を中心にして国々が生まれているようです。
この頃は奈良県付近を都がうろうろしている時代であったためと思われます。。
(あっ、いや時々、難波にいったり、近江に行ったりはしましたが・・・)
人情的に考えると自分のよく知っているところから、始めたいということでしょうか??
余談ですが九州の地名で一つ引っかかるところがあります。
肥国の所ですが、ここだけまたの名がやたらと長い!
その上その他の3つは「日別」なのに 肥国だけ「日向」・・・あやしい・・(-_-)・・あやしすぎる・・・
と言うわけで、わたし的には邪馬台国にからめて考えております。(九州説なので!)( ̄ー ̄)
肥国は大体今の長崎・熊本・佐賀の一部付近のことで、
そう考えると佐賀の「吉野ヶ里」も ひっかっかってきますよね〜。
(でも吉野ヶ里は邪馬台国だとは思ってません!色々なことを考え合わせても、ちょっと違う・・・)
ただ九州にあれだけ大きな集落をもった文化があったという事が重要におもえるのです。
歴史ロマンですね〜(*^ワ^*)
さてさて☆
次々進めなくては!余談だらけでなかなか進まない・・・(^_^;)
先は永うございますゆえ、ぼちぼちお付き合いを・・・<(_ _)>
はい!!次は神々が誕生いたします。お楽しみに!

神々の生成
さて、すでに国生みを終えた二神は次に神々を生むことにした。
まず生まれたのは
大事忍男神=おおことおしおのかみ
次に
石土毘古神=いわつちびこのかみ
次に
石巣比売神=いわすひめのかみ
次に
大戸日別神=おおとひわけのかみ
次に
天之吹男神=あめのふきおのかみ
次に
大屋毘古神=おおやひこのかみ
次に
風木津別之忍男神=かざもつわけのおしおのかみ
次に海の神である
大綿津見神=おおわたつみのかみ
次に水戸の神である
速秋津日子神=はやあきつひこのかみ
次にその妹
速秋津比売神=はやあきつひめのかみ
ここまでであわせて10柱
はい!これまでは伊邪那岐命と伊邪那美命が生んだ神々ですが, ここからはその子、孫とだんだんややこしくなってきます。前出の神々の名前を忘れないようにしましょう!・・・(^_^;)私にゃ無理ですが・・・(爆)

さて、次に
速秋津日子神と速秋津比売神が河海にて生んだ子は
沫那藝神=あわなぎのかみ、沫那美神=あわなみのかみ
次に
頬那藝神=つらなぎのかみ、頬那美神=つらなみのかみ
次に
天之水分神=あめのみくまりのかみ
次に
国之水分神=くにのみくまりのかみ
次に
天之久比奢母智神=あめのくひざもちのかみ
次に
国之久比奢母智神=くにのくひざもちのかみ
ここまでで8柱
次に風の神である
志那都比古神=しなつひこのかみ
次に木の神である
久久能智神=くくのちのかみ
次に山の神である
大山津見神=おおやまつみ
次に野の神である
鹿屋野比売神=かやのひめのかみ(またの名を野椎神=のづちのかみ)
ここまで4柱
ここからひ孫の世代になります。
さて、次に
大山津見神と野椎神が山野にて生んだ子は
天之狭土神=あめのさづちのかみ
次に
国之狭土神=くにのさづちのかみ
次に
天之狭霧神=あめのさぎりのかみ
次に
国之狭霧神=くにのさぎりのかみ
次に
天之闇戸神=あめのくらどのかみ
次に
国之闇戸神=くにのくらどのかみ
次に
大戸惑子神=おおとまとひこのかみ、大戸惑女神=おおとまとひめのかみ
ここまで8柱
次に
鳥之石楠船神=とりのいわくすぶねのかみ(またの名を天鳥船=あめのとりふね)
次に
大宜都比売神=おおげつひめのかみ
次に
火之夜藝速男神=ひのやぎはやお(またの名を火之かが*1毘古神=ひのかがひこのかみ)
またの名を火之迦具土神=ひのかぐつち、という。
この火の神を生んだ事によりほとを焼かれた伊邪那美命は床に伏せってしまった。
この病の女神の吐瀉物が
金山毘古神=かなやまひこのかみとなった。
大便が
波邇夜須毘古神=はにやすひこのかみ、波邇夜須毘売神=はにやすひめのかみ となった。
尿が
彌都波能売神=みつはのめのかみ、和久産巣日神=わくむすびのかみ となった。
この和久産巣日神の子を
豊宇気毘売神=とようけひめのかみ という

そして遂に女神はこの世を去った.

*1、「かが」は変換できませんでした。・・ごめんなさい<(_ _)>

さて、随分沢山の神々の名がでてきました。
これは名前を見てもわかる様に地上の様々な物を人格化しています。
石や土、海、川、山や野原。 そして食物をつかさどる神々・・・(大宜都比売神は粟の国の別名でもでてきましたね。これは粟という穀物に関連しているとおもわれます。)地上で人間が生活していく上での重要な要素がだんだんそろっていきます。最後に人間が獣と一線をひく要因となった「火」が誕生します。
ここでとても気になる神が出てきます。
わかりますか?そう、天鳥船です!(笑)
鳥のように空を飛ぶ船ですよ!その上岩の様にも楠のようにもみえた”空を飛ぶ”船ですよ!!
あやしい・・・あやしすぎる・・・(‐_‐;)
この神は後にもちょくちょく出てくるので要注意!です。
さあ次は生まれるなり母を殺してしまうこととなった宿業の火之迦具土神の悲劇から幕があきます。

ちょっとスクロールが長くなりすぎたようなので、この辺りでページを飛ばしたいと思います.
宜しくお願いします.


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